こけ玉づくりや鉢の絵付け、クイズやカードゲームなどを通して、子どもや若い世代が楽しみながら盆栽に触れられる機会をつくっている、盆栽部「かみんぐ」(以下「かみんぐ」)。
代表を務めるのは、徳島文理大学総合政策学部経営学科1年の亀井遥加(かめい・はるか)さん(以下「亀井さん」)です。
活動の始まりには、高校2年生のときに同級生から言われた「盆栽って何?」という、亀井さんにとって思いがけない一言がありました。
「盆栽」が、当たり前ではなかった

亀井さんが育った高松市鬼無町は、盆栽が身近にある地域です。小学校では5、6年生になると1人1鉢の盆栽を育て、通学路には松畑が広がっていました。
亀井さんにとって、盆栽は特別なものではなく、子どものころから生活の中にある当たり前の存在でした。
英明高等学校2年のとき、たかまつ政策アイデアコンテストへ出場することになり、テーマを考える中で亀井さんが提案したのも盆栽でした。
高松といえば盆栽――。そう思っていた亀井さんに対して、同級生から返ってきたのが「盆栽って何?」という言葉でした。
自分にとって当たり前の存在が、同じ香川県で暮らす同世代にも知られていない。そのことに気づいた亀井さんの中に、「知らないのであれば、もっと広めたい」という思いが生まれました。
チーム「梅キング」として提案した政策プランの名前は、「盆栽と言ったら高松だろ!!!!!」。この提案はアイデア賞を受賞しました。
知ってもらうために、「楽しさ」から入口をつくる
コンテストでの提案をきっかけに、高松市が梅キングの発想と県内クリエイターの提案を生かした高松盆栽のASMR動画を制作するなど、活動は少しずつ周囲へ広がっていきました。
そして高校3年だった令和7年6月27日、地域サークルとして「かみんぐ」を設立。同年には公益財団法人たかまつ讃岐てらす財団のONDO次世代リーダー応援ファンドに「盆栽と言ったら高松だろ!商品開発」が採択されました。
亀井さんが大切にしているのは、「楽しい」と感じるところから盆栽に触れてもらうことです。
令和7年7月のイベントでは、盆栽の値段や樹齢、種類などをクイズ形式で紹介しました。また、よく似た松の種類を神経衰弱のように当てながら特徴を覚えられるカードゲームも制作しています。
こけ玉づくりのワークショップでは、完成したこけ玉を最後に水の入ったバケツへ沈めます。
気泡が出なくなるまで、自分でつくったこけ玉をじっと見つめながら待つ子どもたち。その姿を見ると、亀井さんは「今日、盆栽を好きになるきっかけをつくれたのかもしれない」と嬉しくなるそうです。
盆栽に馴染みのない人にとって、最初は少し難しそうに感じるかもしれません。
だからこそ、まずは遊びながら触れてみる。
そこから「盆栽って面白いかもしれない」と思ってもらうことが、かみんぐのつくる入口です。


自分でつくるから、愛着が生まれる
今年8月には、子どもたちが自分で絵を描いた鉢に松を植えるイベントを行いました。
これまで取り組んできたこけ玉づくりは、土を握る力が必要なことや、机が汚れやすいこともあります。そこで今回は、より参加しやすい鉢の絵付けを取り入れました。
自分で描いた、世界にひとつだけの鉢。
その鉢に植えた盆栽であれば、少し面倒に感じる水やりも「ちゃんと育てたい」という気持ちにつながるのではないかと亀井さんは考えています。
盆栽は、夏には1日2回、春と秋は1日1回、冬でも2〜3日に1回ほどの水やりが必要です。
決して、手がかからないわけではありません。
それでも亀井さんは、「やっぱり手間がかかるところがいいところだと私は思ってます」と話します。
水をやり、様子を見て、また水をやる。
手をかける時間が積み重なるほど、自分だけの大切な存在になっていく。それこそが、亀井さんが伝えたい盆栽の魅力です。


盆栽から、人と人をつなぐ活動へ
令和8年度も、公益財団法人たかまつ讃岐てらす財団のONDO次世代リーダー応援ファンドに「こけ玉で繋ごう!高松の未来!」が採択されました。
新たに考えているのは、高松の企業にこけ玉をつくってもらい、それを子どもたちがデコレーションし、育てていく取り組みです。協力を呼びかけたいのは、盆栽が好きな企業に限りません。亀井さんは、「高松のために何かしたい」という思いを持つ企業にも参加してもらいたいと考えています。企業がつくったこけ玉を子どもたちへ届け、その子どもたちが手をかけながら育てていく。
高校2年生のころ、「知らない人がいるなら、盆栽を広めたい」というところから始まった思いは、今では盆栽を通して企業と子ども、人と人、そして高松の未来をつなぎたいという思いへと広がっています。
令和8年8月29日(土曜日)10時〜17時には、丸亀町グリーン1階けやき広場で開催される高松市主催「きて!みて!体験!高松市伝統的ものづくり in 丸亀町グリーン」に出展します。
高校2年生のとき、同級生から聞いた「盆栽って何?」という一言。
その驚きから始まった活動は、盆栽を知ってもらうだけではなく、自分の手で育て、愛着を持つ楽しさを伝える活動へと育ってきました。
そして今、亀井さんはその盆栽を、人と人をつなぐものにしようとしています。
手間がかかるから、いい。
毎日少しずつ手をかけることで育っていく盆栽のように、亀井さんの思いもまた、出会った人たちへ少しずつ広がっています。
