徳武産業株式会社

香川の介護シューズが、障がい者のアートを“世界に一足”へ

徳武産業30周年と征峯会40周年、二つの節目から生まれた記念モデル

 香川県さぬき市に本社を置き、介護シューズ「あゆみ」を展開する徳武産業株式会社。
 高齢者や足に不安を抱える人の歩みを支えてきた同社が、2026年3月5日、新たな記念モデルを発売しました。それが、社会福祉法人征峯会(茨城県筑西市)との共同プロジェクトから生まれた「瞬感スポッと アート」「エスパド アート」「エスパドワイド アート」です。
 徳武産業の創業30周年、そして征峯会の創立40周年。二つの節目が重なったタイミングで誕生した今回の商品は、単なる記念モデルではありません。
 障がいのある方々が自由に描いたアートを、日常の中で履ける靴へと落とし込んだ、“世界に一足”の介護シューズです。

大きな白布に重ねられた色が、靴になるまで

 プロジェクトのきっかけは、福祉・介護分野でのつながりでした。
 徳武産業の德武社長は、これまでも高齢者施設や障がい者施設の関係者と交流する機会が多く、その中で征峯会の職員とのご縁が生まれました。
 2024年8月6日、德武社長は茨城県の施設を訪問。知的障がいのある利用者たちとともに、大きな白布に自由に色を重ねるワークショップを行いました。
 「白い布に自由に描いてください」と言われたとき、大人はかえって何を描けばよいのか迷ってしまいます。
 しかし、利用者たちは思い込みにとらわれることなく、自分の描きたい色を、思い思いに重ねていきました。
 今回採用されたのは、完成後の一枚ではなく、色が重なっていく途中の段階のアートです。その一瞬を切り取り、布にプリントし、靴のパーツとして裁断しています。
 そのため、同じ柄は二つと存在しません。
 一枚の布から生まれる靴でありながら、裁断される場所によって表情が異なる。まさに、一足ごとに違う物語を持つ靴です。
 カラー名には、「讃岐富士の春」「豊島の波紋」など、香川の情景を思わせる名前も付けられました。茨城で生まれたアートと、香川のものづくりが重なり合う一足となっています。

年間3万通の声に支えられる会社

 徳武産業には、商品に同封しているアンケートはがきが、年間約3万通も返ってくるといいます。1日に届く数は、50通から80通ほど。一般企業のアンケート回収率を大きく上回る、驚くべき数字です。
 しかも、その声を届けているのは、足に不安を抱えている人や、その家族であることも少なくありません。はがきを書き、ポストに投函する。その一つひとつの行動に、同社は深い感謝を寄せています。返送されたアンケートをもとに、誕生月には社員が手書きの手紙とプレゼントを送る取り組みも行っています。今回のアートも、靴として商品化される前に、まずは手ぬぐいとして採用され、顧客から好評を得ていました。
 徳武産業が大切にしてきたのは、機能だけではありません。履きやすさ、歩きやすさはもちろんのこと、足元を見るたびに少し気持ちが明るくなること。外出やリハビリに前向きになれること。自分らしさを諦めずにいられること。
 「足元から人生を幸せにしたい」
 その想いは、創業以来、同社が大切にしてきた軸でもあります。

靴が支えるのは、歩くことだけではない

 日本では、靴の選び方に関する知識が十分に広まっているとは言えません。サイズの合わない靴を履き続けることで、転倒や外反母趾、魚の目、靴擦れなどにつながることがあります。それでも多くの人は、痛みや不調が出てから初めて靴を見直します。
 徳武産業が伝えたいのは、「痛くなってから」ではなく、「そうなる前に」靴を見直す大切さです。正しい靴の選び方を知ることは、転倒予防や自立した生活にもつながります。高齢化が進む社会において、自分の足で歩き続けることは、本人の尊厳や暮らしの質にも関わる大きなテーマです。
 今回のアートシューズは、華やかな見た目や記念モデルとしての特別感だけでなく、靴を通じて人の心と体を支える徳武産業の姿勢を象徴しています。
 そして、もう一つ大きな意味があります。
 障がいのある子どもの親は、社会の視線に傷つき、我が子を守るために外へ出すことをためらうことがあります。
 けれど、自分の子どもが描いた絵が商品となり、誰かの足を包んでいると知ったとき、親たちは大きな喜びを感じたといいます。
 「うちの子が描いたのよ」と胸を張って言えること。我が子の存在が、誰かの役に立っていると感じられること。
 それは、アートが商品になったという以上に、「この子が世の中にいていい」と受け止められるような体験だったのかもしれません。

 香川の介護シューズと、障がいのある方々の自由な表現が出会って生まれた、世界に一足の靴。
 その一足は、誰かの歩みを支えるだけでなく、描いた人、その家族、そして履く人の心にも、そっと明るい色を重ねていきます。

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