この記事でわかること
- 四国経済の中で香川県が果たす中核的役割と産業構造の特徴
- 建設機械・化学・不動産の主要3分野における香川企業の全国的競争力
- 四国他県と比較した製造業集積度とDX推進度の優位性
- 環境技術と再生可能エネルギー分野での先進的取り組み
- 企業誘致と人材確保における四国のゲートウェイとしての戦略的位置づけ
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「四国の中で香川県の経済ってどんな位置づけ?」「他県と比べて何が強いの?」そんな疑問をお持ちの経営者・経営企画担当者の皆様へ。実は香川県は、四国経済の約3分の1を占める経済規模を持ち、独自の産業構造で四国全体の発展を牽引しているんです。
四国経済連合会の最新調査(2025年6月)によると、四国の景気は「一部で足踏みがみられるものの、総じて持ち直しの動きが続いている」状況。その中で香川県は、瀬戸大橋による本州との直結性を活かし、製造業の高度集積とサービス業の拠点機能を併せ持つ、四国経済の中核として機能しています。
さらに、香川県の企業は単に規模が大きいだけではありません。建設機械、高機能素材、再生可能エネルギー事業など、グローバル市場で競争力を持つ企業が集積。DX推進においても、デジタル地域通貨6種類の流通など、四国他県をリードする取り組みが進んでいます。今こそ、四国全体から見た香川県経済の真の実力と可能性を理解する絶好のタイミングです。
数字で見る香川県経済の実力:四国4県の中での位置づけ

香川県の経済規模を四国全体から俯瞰すると、その重要性が一目瞭然です。人口は四国4県で最も少ない約94万人(2025年現在)ながら、一人当たりの生産性では四国トップクラスを維持。これは、高付加価値産業の集積と効率的な産業構造によるものです。
特筆すべきは、香川県が持つ地理的優位性です。瀬戸大橋により本州と直結し、高松空港から国内外への直行便が就航。この交通インフラの充実により、四国の玄関口として、ヒト・モノ・カネ・情報が集まる構造が形成されています。この立地優位性は、企業立地や事業展開において、他の四国3県にはない強みとなっています。
経済指標 | 香川県 | 四国全体に占める割合 | 特徴・強み |
---|---|---|---|
県内総生産 (2021年度) | 約3.8兆円 | 約27% | 人口比(約25%)を上回る経済規模 |
製造品出荷額 | 約2.6兆円 | 約30% | 電気機械・化学工業が牽引 |
サービス業比率 | 約75% | 四国最高水準 | 金融・情報通信業の集積 |
企業本社数 | 約1,200社 | 約35% | 四国の経営中枢機能が集中 |
産業構造の面でも、香川県は四国の中で独自のポジションを確立しています。愛媛県が石油化学・製紙業、高知県が第一次産業、徳島県が医薬品産業に特化する中、香川県はバランスの取れた産業ポートフォリオを構築。製造業では機械・電気・化学が三本柱となり、サービス業では金融・情報通信・観光が発展しています。
また、四国電力の本社が高松市にあることも、香川県経済の重要な要素です。エネルギーインフラの中核として、四国全体の産業活動を支えるとともに、関連産業の集積にも寄与しています。
セクション1のポイント
- 香川県は人口比を上回る経済規模で四国経済の約3割を占める
- 製造業とサービス業のバランスが取れた産業構造が特徴
- 瀬戸大橋と高松空港により四国のゲートウェイ機能を発揮
世界で戦う香川の製造業:香川県内の建設機械メーカーが示すグローバル競争力
香川県の製造業を代表する建設機械メーカーは、建設用クレーンで世界最大手級のメーカーとして、グローバル市場で存在感を発揮しています。2024年12月には香川県西部の工場の新設を決定し、約50億円を投資。これは香川県の製造業が持つ競争力と将来性を示す象徴的な事例です。
この建設機械メーカーの強みは、香川県内での一貫生産体制を維持しながら、世界市場で勝負していることです。香川中部や西武など、県内に複数の生産拠点を配置。地域に根ざしながら世界を目指すという、地方企業の理想的なモデルを体現しています。
- グローバル展開の実績:2019年にドイツの会社の買収により欧州市場を強化。アメリカ、中国、インドなど世界各地に製造・販売拠点を展開し、160カ国以上で製品を販売
- 技術革新への挑戦:2023年に世界初のフル電動ラフテレーンクレーンを発売。建設現場のカーボンニュートラル実現に向けた先進的な取り組み
- 地域経済への貢献:県内4工場で約2,000人を雇用。関連企業を含めると数千人規模の雇用を創出し、香川県経済の重要な柱として機能
四国の他県と比較すると、高知県などには建設機械メーカーなど特徴的な企業がありますが、世界シェアトップクラスの製造業という点では、香川県内の建設機械メーカーの存在は四国の中でも際立っています。建設機械という成長市場で、技術力と品質で勝負する姿勢は、香川県製造業全体の方向性を示しています。
セクション2のポイント
- 香川県内の建設機械メーカーは建設用クレーンで世界最大手級の地位を確立
- 県内一貫生産体制を維持しながら160カ国以上に展開
- 電動化技術で業界をリードし環境対応でも先行
化学産業の高付加価値戦略:香川県発の機能性素材メーカーが切り拓く新市場
丸亀市に本社を置く香川県発の機能性素材メーカーは、ニッチ分野で世界トップシェアを持つ製品を多数擁する化学メーカーです。四国の化学産業といえば愛媛県の石油化学コンビナートが有名ですが、香川県は高機能・高付加価値素材に特化した独自の発展を遂げています。
香川県発の機能性素材メーカーの主力製品は、一般消費者の目に触れることは少ないものの、産業の基盤を支える重要な素材ばかりです。ラジアルタイヤ向け不溶性硫黄では世界シェア2位、プリント配線板用水溶性防錆剤、プール・浄化槽向け殺菌消毒剤など、特定分野で圧倒的な競争力を持つ製品群を展開しています。
四国各県の化学産業比較と香川の独自性
県名 | 化学産業の特徴 | 主要企業・製品 |
---|---|---|
香川県 | 高機能素材・ニッチトップ戦略 | 香川県発の機能性素材メーカー(不溶性硫黄、機能材料) 地元の医薬品メーカー(医薬品) |
愛媛県 | 石油化学コンビナート中心 | 大手総合化学メーカー(愛媛県)、国内有数の石油化学メーカー 基礎化学品の大量生産 |
徳島県 | 医薬品製造に特化 | 医薬品・健康食品で有名な徳島の企業、徳島発のLED関連メーカー LED・医薬品 |
高知県 | 限定的な化学産業 | 地場中小企業中心 農薬・肥料など |
香川県発の機能性素材メーカーの成功は、グローバルニッチトップ戦略の好例です。巨大な市場で薄利多売を狙うのではなく、限定的だが不可欠な市場で高いシェアを獲得。この戦略により、景気変動の影響を受けにくい安定した経営基盤を構築しています。海外展開も積極的で、中国・上海、アメリカなど5つの海外子会社を展開し、世界市場での存在感を高めています。
セクション3のポイント
- 香川県発の機能性素材メーカーはニッチ分野で世界トップシェア製品を多数保有
- 愛媛の石油化学と差別化した高付加価値素材戦略で成功
- 海外5社体制でグローバル市場での競争力を強化
環境・エネルギー分野で先行:香川を拠点とする不動産関連企業が示す事業転換力

香川を拠点とする不動産関連企業が、2024年12月に再生可能エネルギー分野への本格参入を発表しました。これは、香川県企業が持つ事業転換力と先見性を示す象徴的な事例です。四国の他県でも再生可能エネルギー事業は進んでいますが、不動産企業による大規模参入は香川県が先行しています。
香川を拠点とする不動産関連企業が採用した「オフサイトコーポレートPPA」は、香川県さぬき市に約3,100kWの太陽光発電設備を新設し、大手オフィス機器系などの企業に電力を供給する新しいビジネスモデルです。企業は初期投資なしで再生可能エネルギーを利用でき、地域全体の脱炭素化に貢献する仕組みとなっています。
プロジェクト概要 | 詳細内容 | 地域への影響 |
---|---|---|
発電規模 | 約3,100kW/DC | 一般家庭約1,000世帯分の電力 |
CO₂削減効果 | 年間約1,177トン | 杉の木約84,000本分の吸収量相当 |
投資規模 | 非公開(数十億円規模) | 地域経済への波及効果大 |
事業モデル | オフサイトコーポレートPPA | 四国初の本格導入事例 |
香川県は「香川県地域脱炭素ロードマップ」を策定し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速させています。その中で、民間企業による大規模な再生可能エネルギー事業の展開は、官民連携による地域脱炭素化の好例となっています。四国の他県と比較しても、不動産大手による本格的な環境ビジネス参入は先進的な取り組みといえます。
セクション4のポイント
- 香川を拠点とする不動産関連企業が四国初のオフサイトコーポレートPPA事業を開始
- 年間1,177トンのCO₂削減で地域脱炭素化に貢献
- 不動産から環境ビジネスへの事業転換力を実証
DX推進で四国をリード:デジタル地域通貨とイノベーション
香川県のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進は、四国4県の中でも特に先進的です。県内では6種類のデジタル地域通貨が流通しており、これは四国の他県と比較しても突出した数です。デジタル技術を活用した地域経済活性化の取り組みは、香川県が四国のDXをリードしている証左といえます。
高松市では、約20機能を搭載した地域のスーパーアプリの開発も進行中です。行政サービスの申請から地域情報の取得、デジタル地域通貨での決済まで、ワンストップで提供する仕組みは、全国的にも先進的な取り組みとして注目を集めています。
四国各県のDX推進状況比較
項目 | 香川県 | 愛媛県 | 徳島県 | 高知県 |
---|---|---|---|---|
デジタル地域通貨 | 6種類運用中 | 2種類 | 1種類 | 実証実験段階 |
自治体DX | 生成AI実証開始 | RPA導入推進 | 5G活用実験 | デジタル化推進中 |
スーパーアプリ | 開発進行中 | 構想段階 | 未定 | 未定 |
DX支援拠点 | Setouchi-i-Base運営運営 | 支援センター設置 | とくしまDX推進センター | デジタル化推進計画 |
香川県の「Setouchi-i-Base」は、スタートアップ支援とDX推進の拠点として機能しています。「かがわDX Lab」では、有識者と企業が連携してデジタル化を推進。製造業においても、中小企業のDX支援に力を入れており、「かがわ中小事業者CO2CO2削減支援補助金」などを通じて、デジタル技術を活用した脱炭素経営を後押ししています。
セクション5のポイント
- 香川県はデジタル地域通貨6種類で四国最多の運用実績
- 高松市のスーパーアプリ開発で自治体DXをリード
- Setouchi-i-Baseを拠点に企業のDX支援を積極展開
人材獲得競争で優位に立つ:UIターン促進策の充実度
香川県の企業躍進を支える重要な要素が、優秀な人材の確保です。県の調査によると、県内企業の約6割が「予定通り採用できていない」という人手不足の状況。しかし、これは見方を変えれば転職者にとって絶好のチャンスであり、香川県はこの機会を最大限活用すべく、四国で最も充実したUIターン支援策を展開しています。
香川県の魅力は、温暖な気候と災害の少なさに加え、瀬戸内海の美しい景観とうどん文化に代表される豊かな食文化です。瀬戸内国際芸術祭などの文化イベントも定期的に開催され、仕事以外の生活の質も高い水準を維持しています。四国の他県と比較しても、都市機能と自然環境のバランスが最も取れた地域といえるでしょう。
- 企業の人材確保策:
- リモートワーク導入率が四国トップクラス(製造業でも週2-3日の在宅勤務を導入)
- 社内教育制度の充実(香川県内の建設機械メーカーの技術研修センター、香川県発の機能性素材メーカーのR&Dセンターなど)
- 副業・兼業解禁企業の増加による多様な働き方の実現
また、香川県は「ビジネスチャレンジコンペ」を通じて、起業支援を実施。四国の他県でも起業支援は行われていますが、支援金額と支援体制の充実度では香川県が一歩リードしています。これにより、UIターン人材が新たなビジネスを始めやすい環境が整備されています。
セクション6のポイント
- 県内企業の6割が人材不足で転職者に有利な売り手市場
- リモートワーク導入率が四国トップクラスで柔軟な働き方実現
- 起業支援など充実したUIターン支援策
四国経済の未来を創る:香川県企業の成長戦略と波及効果
香川県企業の躍進は、単なる個別企業の成功にとどまりません。四国全体の経済発展を牽引する原動力として、地域経済に大きな波及効果をもたらしています。特に注目すべきは、香川県企業が進める「広域連携」と「イノベーション創出」の取り組みです。
四国経済連合会のデータによると、四国全体で第1次、第2次、第3次の各産業が揃って成長を遂げているのは全国7地域で唯一。このバランスの取れた成長の中心にあるのが、香川県の多様な産業集積です。製造業の技術革新、サービス業のDX推進、環境ビジネスの展開など、各分野でのイノベーションが相互に影響し合い、シナジー効果を生み出しています。
成長戦略 | 香川県の取り組み | 四国全体への波及効果 |
---|---|---|
サプライチェーン強化 | 香川県内の建設機械メーカーの県内4工場体制 関連企業の集積促進 | 四国域内での部品調達率向上 物流効率化による競争力強化 |
環境技術開発 | 香川を拠点とする不動産関連企業の再エネ事業 香川県発の機能性素材メーカーの環境配慮型素材 | 四国全体の脱炭素化加速 環境ビジネスの新市場創出 |
デジタル基盤整備 | デジタル地域通貨の普及 DX支援拠点の運営 | 四国広域でのデータ連携 中小企業のデジタル化促進 |
人材育成・交流 | 香川大学との産学連携 UIターン支援の充実 | 四国全体の人材流動性向上 イノベーション人材の育成 |
さらに、香川県は「未来への投資を応援する総合補助金」(補助率3/4、上限100万円)など、中小企業向けの手厚い支援制度を整備。この制度は四国の他県と比較しても充実しており、GX(グリーントランスフォーメーション)・DX設備投資を通じて、地域全体の産業高度化を推進しています。
セクション7のポイント
- 香川県が四国経済の成長エンジンとして機能
- 広域連携とイノベーション創出で地域全体に波及効果
- 補助率3/4の支援制度など中小企業の成長を強力サポート
まとめ:四国経済の中核・香川県が示す地域発展モデル
四国全体から見た香川県経済の特徴は、「バランス」「革新」「連携」の3つのキーワードに集約されます。人口は四国最少ながら、一人当たりの生産性では四国トップクラス。製造業とサービス業のバランスが取れた産業構造により、安定的かつ持続的な成長を実現しています。
香川県内の建設機械メーカーの世界展開、香川県発の機能性素材メーカーのニッチトップ戦略、香川を拠点とする不動産関連企業の環境ビジネス参入など、既存の強みを活かしながら新分野に挑戦する企業群。そして、デジタル地域通貨やDX推進において四国をリードする革新性。これらが相まって、香川県は四国経済の中核として、地域全体の発展を牽引しています。
企業経営者・経営企画担当者の皆様にとって、香川県の経済動向を理解することは、四国市場での事業戦略を考える上で不可欠です。四国のゲートウェイとして、イノベーションの発信地として、そして広域連携の中心として。香川県企業の躍進は、皆様のビジネスチャンスにも直結しているのです。
参考にした信頼できる情報源
情報の種類 | 参考にした公式サイト |
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四国経済動向調査(2025年6月) | 四国経済連合会公式サイト |
香川県内の建設機械メーカーの丸亀工場新設情報 | 香川県企業誘致情報 |
香川県地域脱炭素ロードマップ | 香川県環境政策課 |
かがわ中小事業者CO2削減支援補助金 | 香川県補助金情報 |
香川県デジタル戦略 | 香川県デジタル戦略課 |