
香川県高松市庵治町。日本が誇る銘石「庵治石」の産地であり、静かな海と石切りの山が共存するこの地で、7月12日と26日、「庵治石を割る」という特別な体験会が開かれました。
その名も「庵治石 石割り体験会(以下、「体験会」)」。主催は田渕石材の若き承継者である田渕恭平さん。
普段立ち入ることのできない採石場で、自らの手で石を割る──そんな非日常体験会に、香川県内外から多くの参加者が集いました。
壮大な景色と、石の迫力に圧倒される

体験会は、山間の採石現場からスタートします。参加者がまず驚くのは、目の前に広がる景色。削られた山肌、積み上げられた石の数々、そして眼下に広がる瀬戸内の風景。すべてが非日常で、香川県民でさえ「まるで観光ツアーのようだった」と声を漏らします。
中でも印象的なのは、実際の採石場に足を踏み入れた瞬間です。特に県外の参加者からは「テレビでは見たことがあったが、実物は想像以上」「圧倒されて立ち尽くした」という声も。まさに、“石と向き合う”体験のはじまりです。
体験の中心は、庵治石の「石割り」。道具を手に、専門的な指導のもとで自分の手で石を割っていきます。「本当に割れるの?」「力じゃ無理では?」という半信半疑の空気は、実際に石が“パカッ”と割れた瞬間、歓声へと変わります。
中には、割れた瞬間の感動で声を失う参加者もいました。見学だけでなく、手を動かし、自らの手で庵治石に“触れる”ことで、石がより身近な存在に感じられる時間となったようです。
「石」をもっと“身近なもの”として


庵治石といえば“墓石”のイメージが強いかもしれません。しかし、この体験会ではそれだけではない庵治石の魅力にも触れられます。参加者には、庵治石を使ったトレーやアクセサリー、スマートフォンケースなど、新しいプロダクトも紹介されました。
「こんなに洗練されたものになるとは」「石のイメージが変わった」との声もあり、体験後にそのままお土産として持ち帰ることができる石のオブジェ作りは多種多様な仕上がりに。実際に触れ、見て、使うことで、「高級素材=遠い存在」だった庵治石が、日常生活の中にも溶け込む可能性を感じさせてくれます。
若き承継者が紡ぐ、庵治石のこれから

この体験会を主催した田渕恭平さんは、庵治石の伝統を受け継ぎながらも、「もっと石を身近に」「石屋さんに気軽に来てもらえる場を」との想いで活動を続けています。体験に訪れる人の多くは、これまで石材業と無縁だった人たち。恭平さんの丁寧なガイドやトークが、その距離感をぐっと縮めてくれます。
「石を割っただけじゃなく、“話したくなる体験”を提供したい」。参加者は体験で得た石を通じて、庵治石の歴史や魅力を他者に語ることができます。
庵治石の文化を知り、割り、持ち帰る。そのプロセスの中で、石材業という一見遠い存在が、少しずつ身近に変わっていく。庵治石の魅力、そして田渕さんという新しい担い手に触れることで、「石屋さんって思ったより面白い」と感じた人が、次の誰かにその体験を語りつなぎます。
「次回もやります。ぜひ一度、庵治町に遊びにきてください。」
庵治石 石割り体験会の様子


