屋島自動車学校

「このまちの笑顔のために」──屋島自動車学校が挑む、教習所の新しい役割

サービス業

コロナ禍を経て生まれた新たな理念

 香川県高松市にある屋島自動車学校は、大川バスグループの一員として地域の交通教育を担ってきました。10社で構成されるグループは、バス・タクシー・旅行・飲食など、多くの事業がコロナ禍で大きな打撃を受けました。
 そんな逆風の中でも従業員の離職はほとんどなく、むしろ「自分たちにできることはないか」と若手から声が上がるなど、会社を想う気持ちが芽生えていったそうです。
 こうした社員の姿勢に支えられ、グループ全体で理念を刷新。「このまちの笑顔のために挑戦する」という想いを掲げ、未来に向けて舵を切りました。

人生で一度きりでは終わらせない場所へ

 多くの人にとって、自動車学校は“人生で一度だけ行く場所”です。しかし屋島自動車学校は、それを変えたいと考えています。「教習所をもっと身近に、地域に開かれた場所にしたい」。そんな想いから、遊びや学びの場としての活用を模索し始めました。
 もともと社員の子どもたちが、休日に教習コースで自転車の練習をしていたことがきっかけとなり、地域の子どもたちにも安全に遊びながら交通ルールを学べる場を提供しようと考えるようになったのです。

無事故の日に生まれた“遊びと学び”のイベント

 2023年から始まったのが、6月25日「無事故(むじこ)の日」に合わせた交通安全イベント。グループ会社が協力し合い、初回から約1,000人を超える来場者を集めました。
 イベントでは、子ども向けのバスの乗り方教室やシートベルトの衝撃体験、白バイ・パトカーとの写真撮影、スタンプラリーや地元ダンススクールによる「交差点ダンス」、さらにはキッチンカー出店やSDGsをテーマにした展示も行われ、大人も子どもも楽しめる内容となりました。
 特に印象的だったのは、社員たちが誰よりも楽しそうに運営していたことです。自らが企画し、実施したこのイベントは、職員にとっても大きな誇りになったといいます。

小さな一歩を積み重ねて、地域とともに

 こうした取り組みを通して屋島自動車学校が目指しているのは、「交通教育の場」にとどまらない存在です。たとえば自転車教室を定期的に開催したり、年齢に応じて遊べるエリアを整備したり、保護者同士のコミュニティづくりに活用したりと、地域との接点を多角的に生み出そうとしています。
 社員研修や企業向け交通安全講習など、本来の使命である「交通事故の減少と地域の安全確保」に対する事業展開も進めつつ、「子どもたちのために」「地域のために」という軸はぶれることがありません。


 小さな一歩を積み重ねながら、変えることを恐れず“楽しむ“。そんな想いが職場全体に根づいてきた今だからこそ、教習所は“人生で一度だけ行く場所”ではなく、“いつでも誰でも戻ってこられる場所”になろうとしています。