
スプレー缶を片手に、香川のまちをアートで彩るスプレーアーティスト「ART&PEACE」代表・daisukeさん。2013年に独学で始めたスプレーアートは、今や個展をはじめ、テレビやイベントへの出演、イベント主催など多方面に広がりを見せています。
独学から始まったスプレーアート人生
飲食業に従事していた当時、昼休みに「短時間で描けるスプレーアート」に出会ったのがきっかけでした。当時は珍しかったこのジャンルを、海外の動画を参考に完全独学でスタート。描いた作品をSNSに投稿したところ、たまたま個展関係者の目に留まり、半年後に初の個展を開催することになります。
個展に向けて40点の作品を描くという無謀とも思える挑戦でしたが、想像以上に好評を得て作品も売れ、「誰かに喜ばれること」がアーティストとしての原点となりました。翌年にはカフェギャラリーでの2回目の個展も開催し、テレビや新聞からの取材も舞い込むようになりました。
パフォーマンスへの情熱

daisukeさんが目指したのは、観客の前で描く「ライブ型」のスプレーアート。しかし、屋外でスプレーを使うことへの制限が多く、香川県内ではなかなかパフォーマンスの場が得られませんでした。
そんな中、塩江美術館でのパフォーマンスが転機となります。来場者の多くは絵のプロや美術教師でしたが、スプレーアートの独自性が大きな反響を呼び、館内での個展へとつながりました。以降、県内外のホールやギャラリーで年に数回のペースで個展を続けていきます。
本格的な転機は、九州・小倉のショッピングモールからのイベント出演オファー。初めて出演料が発生したこの経験を機に、スプレーアートの道一本で生きていくことを決意します。
活動の転機とコロナ禍での進化
2018年、大手塗料メーカー・ロックペイントとのスポンサー契約が決まり、アーティストとしての活動基盤が強化されました。現在、ライブパフォーマンスや体験教室では、同社の水性スプレーを使用しています。シンナー臭がなく、人体や環境にも配慮された安全性の高いスプレーは安心して使用できると好評です。
翌2019年には、テレビ番組「テレビチャンピオン」での優勝をきっかけに全国的な注目を集め、イベント出演のオファーも急増しました。しかし、その矢先にコロナ禍が到来。予定されていた多くのイベントが中止となり、思わぬ空白期間を迎えることになります。失意の中でも個展の依頼は続き、その期間を活かしてデッサン力を磨いていきました。
それまで苦手だったペットの肖像画や精密な動物画にも挑戦し、表現の幅が大きく広がります。「もしコロナがなければ、ずっとパフォーマンスに専念していて、描写力は上がっていなかったかもしれない」と当時を振り返ります。

子どもたちと地域にアートで貢献する

2024年にはアトリエを構え、指導や体験の場を設けました。スプレーアートは屋内で描きにくく、続けるには環境が必要な分野です。そんな中でも、児童養護施設や福祉施設、小学校などへ出向き、絵が苦手な子どもにも「完成の達成感」を味わってもらう活動を行っています。
こうした活動を通じて、かつて体験した子どもが大人になり、アートに関わる道へ進んだという報告も届くようになりました。「子どもたちが絵を好きになるきっかけをつくれたら嬉しい」と、笑顔で話します。
また、毎月第4日曜日にうみまち商店街で開催される「MINA フェス(ミナフェス)」では、香川のアーティストたちが集まり、ステージやパフォーマンスを展開。1周年時には14組が参加し、登録アーティストも40名以上に増えました。フェスを通じて地域のにぎわいを創出し、現在は商店街のシャッターにスプレーアートを描くプロジェクトも進行中です。
香川県は「芸術のまち」として知られながらも、スプレーアートのような新しいジャンルの活動場所は限られています。daisukeさんは、そんな状況に風穴を開けるように、独学と行動力で道を切り拓いてきました。
香川がもっと楽しくなるようにーーdaisukeさんはスプレー缶を片手に、今日も香川のどこかでその“きっかけ”を描いてい

