合同会社Biryoku

学生起業から世界へ──合同会社Biryoku・代表 藤澤 暉 さんが描く未来

 香川大学教育学部の藤澤 暉 さん(以下「藤澤さん」)が代表を務める「合同会社Biryoku(以下「Biryoku」)は、香川県における学生の社会体験機会の拡充を目指して立ち上げられた学生発のベンチャーです。地域と学生をつなぐ架け橋として活動を続けてきた藤澤さんに、新たな挑戦への想いや今後の展望など取材させていただきました。

“きっかけ”を仕組みに──地域と学生をつなぐ力

 Biryokuの原点は、「香川県にはインターンシップ文化がない」という課題感でした。学生が企業でリアルな社会体験を積める場が少ない——そんな現状を変えたいと立ち上げたのが、Biryokuが手がけてきた「企業と学生の交流会事業」です。
 この仕組みはすでに一定の形を成し、今後は藤澤さんが部長を務める「香川大学起業部」に引き継がれていきます。Biryokuとしての活動は一段落しますが、当時のメンバー数名は関わり続ける予定とのこと。自分たちが築いた仕組みを次世代に託し、より広く深く地域に根づくことを目指しています。
 また、Biryokuでは「家庭教師マッチング事業」も展開中。こちらも卒業までに完成を目指しており、香川県内における学びの選択肢を広げる取り組みです。
 なお、企業と学生の交流会として開催しているBBQイベントは、学生にとって企業のリアルな姿を知る貴重な場となっており、参加希望者は随時受け付けているとのこと。新しいつながりや学びを求める学生にとって、挑戦の入り口となりそうです。

海外から日本を見る──インドネシアとの新しい関係

 2025年5月、藤澤さんはインドネシアに向けて新たな一歩を踏み出しました。現地の人々を対象としたオンライン日本語学校を立ち上げ、日本とインドネシアの新しい架け橋をつくろうとしています。
 「インドネシアの人たちは、本当に素直で吸収力が高いんです。日本語の学習にも前向きで、教える側としてもとてもやりがいがあります」と藤澤さんは話します。
 日本の学習コンテンツを活かしたプログラムを提供しながら、現地との文化的な交流も深めています。
 さらに、今後は日本側の企業との連携にも力を入れていく予定です。技能実習や採用の現場では、送り出す側・受け入れる側双方の課題がありますが、藤澤さんはその“間”に立ち、率直な声を聞き取ることができる立場です。「海外に出て初めて、日本という国の輪郭がクリアに見えることもある」と語る藤澤さんは、すでに世界に向いています。

次世代の起業家たちへ──香川大学起業部のこれから

 香川大学起業部もまた、藤澤さんの大切な活動のひとつです。かつては人数も少なく、組織としての継続性にも課題がありましたが、今では入部希望者が急増し、イベントを通じた選抜制度も導入され、「経営に興味がある本気の学生」がたくさん在籍しています。
 藤澤さんは起業部部長職の承継も視野に入れた体制づくりを進めてきました。起業という選択肢を、特別なものではなく、学生にとって自然なキャリアの一つとして浸透させていく。そんな未来が、確実に形になりつつあります。
 将来は50歳前後で教職に就きたいという藤澤さん。それまでは、誰かの挑戦を支える存在でありたいと語ります。「企業側の受け入れ体制も大切ですが、学生が社会のことを知る努力も必要だと思います」。日々インプットを続ける彼の姿勢は、まさに“学び続ける起業家”そのものです。