三重県地元企業のブランディング戦略｜地域発信でファンをつくる方法

この記事でわかること

• 三重県地元企業が実践するSNS活用とデジタル戦略の最新動向
• 伝統産業のブランド化で地域の魅力を全国に発信する方法
• 地域連携と産学協働で生まれる新たなブランド価値
• 成功企業に学ぶファンづくりのための具体的施策
• 補助金活用で実現する効果的なブランディング戦略

読了目安時間：約7分

「地域の良さはあるけど、どうやって発信すれば…」「他県の企業に負けない魅力を伝えたい」そんな悩みをお持ちの広報担当者の方に朗報です！三重県では今、地元企業が独自のブランディング戦略で全国から注目を集めています。

伊勢神宮、松阪牛、真珠…三重県には世界に誇る地域資源が数多く存在します。しかし、その魅力を効果的に発信し、ファンを獲得することは簡単ではありません。そんな中、県内企業はSNS活用、伝統産業の革新、地域連携など、様々なアプローチでブランド力を高めています。

特に注目すべきは、三重県観光連盟のInstagram戦略です。フォロワー数4.8万人を誇る同アカウントは、都道府県観光振興団体の中で全国1位。その成功の秘訣は、トレンドを押さえた動画戦略と、統一感のあるアカウント運営にありました。地元企業もこうした先進事例から学び、独自のブランディングを展開しています。

SNSで魅力発信！三重県観光連盟の先進的デジタル戦略

三重県の魅力を全国に発信する上で、今最も注目されているのが三重県観光連盟のSNS戦略です。特にInstagramでの成功は目覚ましく、フォロワー数は4.8万人を突破。これは都道府県観光振興団体の中で全国第1位という快挙です。

この成功の背景には、緻密に計算されたデジタル戦略があります。2023年7月には従来の写真投稿アカウントに加え、動画専用の新アカウントを開設。SNSトレンドを的確に捉え、若年層にアプローチする体制を整えました。

戦略のポイント	具体的な施策	得られた成果
アカウントの使い分け	写真用と動画用で2つのアカウントを運営	投稿の統一感向上でフォロワー増加
トレンド活用	流行のBGM、テロップ、サムネイル戦略	若年層へのリーチ拡大
インフルエンサー連携	2021年からTikTokで撮影技術を学習	プロ並みの動画制作スキル獲得
情報の充実	観光地の場所・営業時間を明記	実際の来訪につながる投稿実現

特筆すべきは、2021年に実施したTikTok施策です。著名インフルエンサーから三重県の魅力を伝える動画撮影技術を学び、その知見を公式アカウントに活用。プロモーションチーム6名という少人数体制ながら、外注を最小限に抑えつつ高品質なコンテンツを量産する体制を確立しました。

この成功モデルは、県内の地元企業にも大きな影響を与えています。限られた予算でも工夫次第で全国に発信できることを証明し、多くの企業がSNSを活用したブランディングに取り組むきっかけとなっています。

セクション1のポイント

• 三重県観光連盟はInstagram フォロワー4.8万人で全国1位
• 写真用・動画用の2アカウント体制で統一感のある発信を実現
• インフルエンサーから学んだ技術を活用しトレンドを押さえた動画制作

伝統工芸×現代デザイン！伊勢型紙の革新的ブランド展開

千年以上の歴史を誇る伊勢型紙は、三重県鈴鹿市で受け継がれてきた伝統工芸品です。かつては着物の染色に使われる「道具」でしたが、現在ではアート作品としての価値も認められ、新たなブランド展開を見せています。

伊勢型紙の最大の特徴は、その驚異的な精密さです。職人たちは3cm四方に900個以上の穴を開けながら美しい文様を描き出します。この技術力の高さは世界でも類を見ないもので、19世紀後半にはヨーロッパの芸術家たちを魅了し、アールヌーボーなどの芸術運動にも影響を与えました。

• 現代的な商品展開：扇子、財布、名刺入れ、しおり、LED照明など、日常生活で使える商品に伊勢型紙の文様を活用。特に扇子は外国人観光客に大人気
• 体験型観光の推進：鈴鹿市伝統産業会館では型紙彫刻体験を実施。観光客が実際に制作を体験することで、伝統工芸の価値を実感
• 企業コラボレーション：三重県の地方銀行の新本部棟では、伊勢型紙をモチーフにした大型の壁面スクリーンを設置。地域の伝統と現代建築の融合を実現

特に注目すべきは、「伊勢型紙産地協議会」の設立です。2009年に業界統一を図るため設立され、「伊勢型紙」として地域ブランドを構築。伝統的工芸品の指定を受けながらも、現代のニーズに合わせた商品開発を積極的に展開しています。

セクション2のポイント

• 伊勢型紙は千年以上の歴史を持つ精密な伝統工芸
• 日用品から建築まで幅広い分野で現代的な活用を推進
• 体験型観光と企業コラボで新たなファン層を獲得

食のブランド力で全国制覇！三重県を拠点とする大手食品メーカーと伊勢の老舗和菓子店の戦略分析

三重県の食品企業といえば、三重県を拠点とする大手食品メーカーと伊勢の老舗和菓子店が双璧をなしています。両社とも地域に根ざしながら全国展開に成功し、それぞれ独自のブランディング戦略で消費者の心を掴んでいます。

津市に本社を置く三重県を拠点とする大手食品メーカーは、「あずきバー」や「肉まん・あんまん」で知られる食品メーカーです。創業以来、「母と子の楽しい味づくり」をテーマに商品開発を続け、2014年には「ゴールドシリーズ」を立ち上げ。高付加価値商品として、ゴールド肉まん・あんまんから始まり、現在ではゴールドあずきバーシリーズまで展開しています。

地域密着と革新の両立

企業名	ブランド戦略の特徴
三重県を拠点とする大手食品メーカー	・三重県内に複数の生産拠点を維持し地域雇用に貢献 ・企業内託児所を2007年に県内他社に先駆けて開設 ・米国・中国への海外展開でブランドをグローバル化
伊勢の老舗和菓子店	・伊勢神宮参拝客向けの伝統的な土産物から全国ブランドへ ・「朔日餅」など季節限定商品で希少価値を演出 ・直営店舗での体験価値（伊勢の老舗和菓子店の氷、ぜんざい）を提供

三重県を拠点とする大手食品メーカーの強みは、地域貢献と事業成長の好循環を生み出している点です。県内での雇用創出はもちろん、働き方改革にも積極的で、令和4年度には「みえの働き方改革推進企業ベストプラクティス賞」で総合1位を獲得。こうした取り組みが企業イメージの向上につながり、優秀な人材確保にも寄与しています。

一方、伊勢の老舗和菓子店は、「場所」と「体験」を軸にしたブランディングで成功しています。伊勢神宮という日本有数の観光地に根ざし、参拝の思い出と共に記憶される商品として定着。さらに、本店や五十鈴茶屋での飲食体験は、単なる土産物購入を超えた価値を提供しています。

セクション3のポイント

• 三重県を拠点とする大手食品メーカーは地域雇用と働き方改革で企業ブランドを向上
• 伊勢の老舗和菓子店は伊勢神宮との結びつきと体験価値でブランド構築
• 両社とも地域性を活かしながら全国展開に成功

地域連携で相乗効果！観光×食×文化の統合ブランド戦略

三重県のブランディング成功の秘訣は、個々の企業や産業が単独で活動するのではなく、地域全体で連携する仕組みが機能している点にあります。観光、食、文化が有機的に結びつき、相乗効果を生み出しています。

その中核となっているのが、県が推進する「三重ブランド認定制度」です。豊かな自然と、それを生かす技術から生み出された産品とその生産者をセットで認定し、情報発信することで三重県のイメージアップを図っています。

地域ブランディング創生事業の展開

連携分野	具体的な取り組み	期待される効果
観光×食	伊勢神宮参拝と伊勢の老舗和菓子店、松阪牛などの食体験を組み合わせた観光ルート開発	滞在時間延長と消費額増加
文化×産業	伊勢型紙の技術を活用した企業の施設デザイン（三重県の地方銀行本部棟など）	地域アイデンティティの可視化
伝統×革新	松阪木綿を使用した現代的なデザイン商品の開発	若年層への訴求力向上
企業×教育	地元小中学校での伝統工芸体験授業の実施	次世代への技術継承と郷土愛醸成

2023年度には「地域ブランディング創生事業」として、地域の情報発信を担う外部企業が受託。県内外への情報発信を強化し、「Mie, Once in Your Lifetime」（一生に一度は訪れたい三重県）というテーマで観光ブランディングを展開しています。

この統合的なアプローチにより、個別の商品やサービスだけでなく、「三重県」という地域ブランド全体の価値が向上。企業にとっても「三重県の企業」であることが付加価値となり、商品の差別化やPR活動に活用できるようになっています。

セクション4のポイント

• 三重ブランド認定制度で産品と生産者をセットで発信
• 観光・食・文化の有機的な連携で相乗効果を創出
• 地域ブランド全体の価値向上が個別企業にも恩恵

成功企業に学ぶ！効果的なブランディング施策のポイント

三重県の地元企業が実践するブランディング戦略から、他地域でも応用可能な成功のポイントが見えてきます。限られたリソースでも工夫次第で大きな成果を上げることができるのです。

まず重要なのは、デジタルとリアルの融合です。三重県観光連盟のSNS戦略は、単にフォロワー数を増やすだけでなく、実際の来訪につなげることを重視。観光地の場所や営業時間といった実用的な情報を必ず盛り込み、「行ってみたい」から「行ける」への橋渡しをしています。

ブランディング成功のための5つの施策

重要度	施策のポイント	具体的なアクション
★★★	ストーリーの明確化	地域の歴史や文化を商品・サービスに込める 従業員も語れる「らしさ」を定義する
★★★	体験価値の提供	工場見学、制作体験など五感で感じる機会創出 SNS映えする撮影スポットの設置
★★	コラボレーション推進	異業種との連携で新たな価値創造 地域内企業との相互送客システム構築
★★	従業員の巻き込み	インナーブランディングの徹底 従業員をブランドアンバサダーに
★	継続的な改善	定期的な効果測定とPDCAサイクル 顧客フィードバックの収集と反映

補助金の活用も見逃せません。三重県では「未来への投資を応援する総合補助金」など、中小企業のブランディング活動を支援する制度が充実。初期投資のハードルを下げることで、多くの企業がチャレンジできる環境が整っています。

セクション5のポイント

• デジタルとリアルの融合で実際の行動につなげる
• ストーリーと体験価値の提供がファン獲得の鍵
• 補助金活用により初期投資リスクを軽減可能

まとめ：地域発信でファンをつくる、三重県企業の挑戦

三重県の地元企業が実践するブランディング戦略は、「地域の強みを活かしながら、現代的な手法で全国にファンを広げる」という共通点があります。SNS活用、伝統産業の革新、産学連携、地域連携など、それぞれのアプローチは異なりますが、すべて地域への誇りと愛着が原動力となっています。

特に印象的なのは、「小さく始めて、大きく育てる」という姿勢です。三重県観光連盟は6名という少人数で全国1位のSNSアカウントを運営し、伊勢型紙の職人たちは伝統技術を守りながら現代のニーズに応える商品を開発。限られたリソースを最大限に活用する工夫が、持続可能なブランディングにつながっています。

また、地域全体で支え合う仕組みも成功の要因です。企業単独ではなく、行政、教育機関、観光団体が連携することで、より大きなインパクトを生み出しています。これは他地域でも参考になるモデルといえるでしょう。

三重県企業のブランディング戦略から学べることは、地域の魅力は必ずあり、それを効果的に発信する方法も必ず見つかるということ。大切なのは、自分たちの「らしさ」を信じ、継続的に発信し続けること。そして、地域全体で協力しながら、新しいファンを獲得していくことです。

あなたの企業や地域にも、きっと素晴らしい魅力があるはずです。三重県の事例を参考に、独自のブランディング戦略を構築してみませんか？

参考にした信頼できる情報源

情報の種類	参考にした公式サイト
三重県観光連盟のSNS戦略	アドタイ「地方自治体の観光プロモーション成功事例」
伊勢型紙の伝統と革新	伊勢形紙協同組合公式サイト
三重県を拠点とする大手食品メーカー の取り組み	みえの企業まるわかりNAVI
伊勢の老舗和菓子店の店舗展開	伊勢の老舗和菓子店公式サイト
三重ブランド認定制度	みえフードイノベーション公式サイト