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はじめに
「三重県で起業や新しいビジネスを始めたいけど、どんな業界にチャンスがあるの?」そんな疑問をお持ちの方に向けて、最新の公的データをもとに三重県のビジネス環境を分かりやすく解説します。難しい統計データを噛み砕いて、実際にビジネスで活用できる情報をお届けします。
この記事でわかること
- 三重県にはどんな会社がどれくらいあるの?
- どの業界が多くて、どの業界が少ないの?
- 小さな会社と大きな会社の割合は?
- 今伸びている業界と衰退している業界
- このデータをビジネスにどう活かす?
1. 三重県には約7万以上の会社がある!全体像を知ろう

まずは三重県全体の「会社の数」から見てみましょう。2021年の調査によると、三重県には72,261の事業所があります。事業所というのは、会社の本社や支店、工場、店舗などのことです。
この数字がどれくらいすごいかというと、全国で23番目の多さです。人口が全国22位の三重県としては、まずまずの数字といえるでしょう。そしてこれらの事業所で働いている人は約80万人。1つの事業所あたり平均11人が働いている計算になります。
「平均11人」ということは、三重県の会社のほとんどが小さめの会社だということです。大企業もありますが、家族経営のお店や中小企業が県内ビジネスの主役なんです。実際、企業の99.8%が中小企業で、働いている人の88.3%も中小企業で働いています。
これって何を意味するかというと、「小さく始めても大丈夫な環境」だということ。大企業だけが成功する場所ではなく、アイデア次第で小さな会社でも活躍できる土壌があるんです。
セクション1のポイント
項目 | 数値 | これってどういうこと? |
---|---|---|
事業所数(会社・お店の数) | 72,261 | 全国で23番目に多い |
働いている人の数 | 798,103人 | 全国の働く人の1.4%が三重県で働いている |
中小企業の割合 | 99.8% | ほとんどが家族経営や中小企業。大企業は0.2%のみ |
2. どの業界が人気?三重県の業界ランキング
三重県でどんな業界の会社が多いのか、ランキング形式で見てみましょう。これを知ることで「競争が激しい業界」と「まだ空いている業界」が分かります。
1位は「卸売・小売業」で、17,456事業所(全体の24.2%)。コンビニ、スーパー、服屋さん、電器屋さんなど、私たちが普段利用するお店がこの分野です。4軒に1軒がこの業界なので、確かに街を歩いていると一番目にするのは小売店ですよね。
2位は「宿泊・飲食業」で8,007事業所(11.1%)。ホテル、旅館、レストラン、居酒屋、カフェなどです。伊勢志摩という観光地を抱える三重県らしい結果です。
3位は「建設業」で7,422事業所(10.3%)。家を建てたり、道路を作ったりする業界です。意外と多いのは、地域密着型の小さな工務店や電気工事屋さんが多いからです。
面白いのは、三重県といえば製造業(工場)のイメージがありますが、事業所数では4位です。ただし、働いている人の数では製造業がトップ。これは「少ない数の大きな工場でたくさんの人が働いている」ことを意味します。
セクション2のポイント
業界ランキング | 事業所数 | 全体に占める割合 | この5年の変化 |
---|---|---|---|
1位:卸売・小売 | 17,456 | 24.2% | 10.8%減少 |
2位:宿泊・飲食 | 8,007 | 11.1% | 13.8%減少 |
3位:建設 | 7,422 | 10.3% | 5.9%減少 |
4位:製造 | 6,789 | 9.4% | 10.8%減少 |
5位:医療・福祉 | 5,977 | 8.3% | 5.8%増加 |
情報通信(IT関係) | 469 | 0.6% | 8.6%増加 |
この表で注目したいのは「この5年の変化」の列です。多くの業界で事業所数が減っているのに対し、「医療・福祉」と「情報通信(IT関係)」だけが増加しています。これは高齢化社会の進行とデジタル化の波を表していますね。
特に「情報通信」はまだ469事業所(0.6%)しかありません。これは裏を返せば「IT関係のビジネスにはまだまだチャンスがある」ということです。
3. 小さな会社が主役の三重県~起業しやすい環境~
三重県の会社の規模をもう少し詳しく見てみましょう。実は三重県の約4割の事業所が「従業者5人未満」の小規模事業所です。家族経営や少人数のお店・会社がとても多いんです。
一方で、わずか0.2%の大企業が県内雇用の11.7%を支えています。つまり「少数の大企業と多数の小企業」という構造です。
この環境の良いところは:
- 起業のハードルが低い:多くの会社が小規模なので、小さく始めても馴染みやすい
- 意思決定が早い:小さな会社は社長との距離が近く、新しいことを決めるのが早い
- 人材不足を抱えている:平均11人という規模では専門人材が不足しがち
3つ目の「人材不足」は一見マイナスに見えますが、これはビジネスチャンスでもあります。業務効率化ツール、ITサポート、専門人材のマッチングサービスなど、「人不足を解決するサービス」への需要が高いということです。
4. 今注目!伸びている業界と機会のある分野
データから見えてくる「今後有望な分野」をご紹介します。単純に「事業所数が多い」=「チャンスがある」ではありません。重要なのは「変化の方向性」です。
減っているけど実は狙い目の分野
製造業は事業所数こそ減っていますが、実は「選択と集中」が進んでいる分野です。小さな町工場は減っていますが、半導体関連やEV(電気自動車)部品などの成長分野には大きな投資が集まっています。
ここでのビジネスチャンスは:
- 工場設備のメンテナンス・保守
- 省エネ・再生可能エネルギーの導入支援
- 製造業向けの専門技術者派遣
- AIやIoTを使った工場の効率化サポート
宿泊・飲食業もコロナの影響で一時的に減りましたが、インバウンド(海外観光客)の回復とともに復活しています。ただし、今度は「質の向上」が求められています。伊勢志摩という観光地では、ただの宿泊・食事ではなく「体験」を提供する事業者が注目されています。
確実に伸びている注目分野
医療・福祉業界は高齢化の進行で着実に成長しています。事業所数が5年で5.8%増加しているのがその証拠です。でも、この分野で起業を考える場合は:
- 高齢者向けの生活支援サービス(配食、掃除、買い物代行)
- 介護施設向けのITシステム導入支援
- 健康管理アプリや見守りサービス
- 介護用品のレンタル・販売
といった周辺サービスの方が参入しやすいでしょう。
情報通信業界(IT関係)は事業所数がまだ少ないものの、8.6%と高い成長率を示しています。三重県の企業の多くがまだデジタル化に取り組めていないため、「IT化のお手伝い」をする事業には大きなチャンスがあります:
- 中小企業向けのホームページ制作
- オンライン販売システムの導入支援
- クラウドサービス(会計ソフトなど)の導入サポート
- SNSマーケティングの代行
5. このデータをあなたのビジネスにどう活かす?

「データは分かったけど、実際にどう使えばいいの?」という方のために、実践的な活用法をご紹介します。
ステップ1:市場の「空き具合」をチェック
まず、あなたが参入したい業界の「競合の多さ」を把握しましょう。例えば:
- 競合が多い分野:卸売・小売(24.2%)、宿泊・飲食(11.1%)
→ 差別化が必要、ニッチな分野を狙う - 競合が少ない分野:情報通信(0.6%)、専門サービス
→ 参入の余地が大きい、先行者利益を狙える
ステップ2:トレンドの方向性を見極める
「今」多い業界ではなく、「これから」伸びる業界を見つけることが重要です:
- 伸びている分野:医療・福祉(+5.8%)、情報通信(+8.6%)
→ 市場拡大に乗れる可能性が高い - 減っている分野:従来の製造業、小売業
→ 新しいやり方での参入、既存企業の支援ビジネスに機会
ステップ3:小さく始めて検証する
三重県の企業の4割が5人未満という環境を活かして、まずは小規模でスタートしましょう:
- 1つの市町村から始めて、うまくいったら県全体に展開
- 特定の業界に特化したサービスを提供
- 既存企業との協業から始める
6. まとめ:データを味方につけて賢くビジネスを始めよう
三重県は決して大きな市場ではありませんが、だからこそ「ちょうどいい規模感」でビジネスを始めるには最適な場所です。
今回のデータから分かったポイントは:
- 小規模事業者が主役なので、小さく始めやすい
- IT化が遅れている企業が多く、サポートビジネスにチャンス
- 高齢化による医療・福祉関連の需要拡大
- 製造業の高度化により、専門サービスの需要増加
大切なのは、このような公的データを定期的にチェックして、変化の兆しを早めに捉えることです。そうすることで、競合が少ないうちに新しい市場に参入できるチャンスを掴むことができるでしょう。
あなたのビジネスアイデアと三重県の現状を照らし合わせて、ぜひ成功への第一歩を踏み出してください!
参考データソース
データソース名 | URL |
---|---|
令和3年経済センサス-活動調査(確報)三重県横断集計 | https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001102078.pdf |
若者の県内定着・人口還流にかかる現状および課題 | https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001112747.pdf |
統計でみる三重のすがた 2023 | https://www.pref.mie.lg.jp/DATABOX/88443000001-01_00011.htm |
中小企業・小規模企業白書2023(三重県抜粋) | https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf |